Vol.2「消費者」から「文化的創造者」へのシフト
【学び】

宇宙船地球号
創造学校
レポート

Interview
谷崎テトラ / 大江亞紀香 / 藤原ちえこ
Interviewer 木下芙美


—最後に、改めて、システムクラスに登壇したテトラさんにもういちどお話をうかがいました。システムクラスでは、どのようなワークショップが行われたのでしょうか。
今回の創造学校では、この宇宙船地球号という感覚、ホリスティックという全体性を学ぶためのワークショップを3つのクラスに分かれて体験してもらったわけですが、僕が担当したシステムクラスは、まさにこの全体をシステムとして捉えるシステム哲学や、一般システム理論と言われているものから出発して、「この世界のより良いシステムに移行するためにどうしたらよいのか?」ということを、全体では「Design for Change」のメソッドを使ってセッションを行いました。これを簡単に説明すると、
「Feel(感じる)→Imagine(想像する)→Do(行動する)→Share(共有する)」
という流れの考え方です。



この創造学校のクラスが始まる前に、全クラス100人くらいの参加者が握手をするところからスタートしました。実はこれは単なる握手ではなくて、実際に参加者同士で身体的な触れ合いが一瞬でもあることによって、その後のワークショップに対する参加への意識やコミットメントを深めるために行いました。
そして、システムクラスの中でも、いきなりこのシステムのセオリーや理論を学んでいくということはせずに、最初は参加者全員で体を動かすところから始めました。
参加者全員が自由に教室の中を動き回る中で、正三角形を形作るということをやるんですね。
これは頭の中で自分以外の2人を心の中で決めて、その人たちの動きと自分の動きの中で正三角形を形作るようにするというワークで、全員が一斉に動いていくので、絶えず絶えず正三角形の形は変化していきます。その変化とともに、自分も位置を変えていく。自分が位置を変えていくことによって、他の人の正三角形の形も変わっていき、絶えず絶えず人と正三角形の位置が変化していきます。そして、最終的に全員が正三角形をポジションできるようなところに到達すると、そこが一つ安定するわけですね。
そういうことを細かく説明せずに、体感的にそれをやることです。そして、ここで重要なのは、このようにルールを細かく説明しなくても、暗黙のルールというのをみんな何となく知っているということです。例えば、教室の外へ出て行って、教室の外で動くということはせずに、教室という一つの空間で行われるという暗黙のルール、そういったシステムが場の全体を捉えるときに、その中にある暗黙のルールを共有することと、その中で絶えず絶えずシステムは変化し続けているということを体感的に感じるということが大切で、そこからシステムクラスが始まりました。
そして、二つ目のポイント「Imagine(想像する)」という段階を考えること。そこで、まさに僕が先ほどから話しているようなフラー博士の思想とか、ラズロ博士のシステム哲学の概要をお話しするわけですが、そうすることによって自分が体感したことを頭の中でImagine(想像)できるわけです。
その次に、具体的に「行動する」という動きと「シェア(共有)する」ということで、世界で今広がりつつある様々なワールドシフトの事例、例えば、ダボス会議でワールドシフトのワークショップが行われたり、ガーナやケニアでワールドシフトのワークショップが行われたりして、現在まで世界10カ国以上でワールドシフトのワークショップが行われいる動きを共有して、この世界中で広がっているワールドシフトの運動体をイメージするということをやりました。

ーシステムクラスの「システム」という意味をあらためてご説明いただけますか。
「システム」という言葉で皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか。システムというと、エンジニアの人は、コンピューターのシステムみたいなことを考えるだろうし、社会のシステムと考える人もいるでしょう。でも、僕たちの体もシステムですし、例えば山や川というような系統も、系統として考えるシステムですし、学問や思想といった組織もシステムです。 システムと言ったときの考え方は様々なのですが、ポイントは「全体として捉える」ということになります。個別の事例ではなくて、全体としての動きを見るということです。ですから、「システム思考」とは、分析だけでは見えない全体像を見るということがシステム思考ということです。
例えば、それぞれの点があって、その一つの点を考えるというのが学問や、専門的に特化していることなのですけど、これをそれぞれのつながりの中で考えていくことがシステム思考で、点と点が線で繋がったものが並んでいて、矢印でつないでいくこと。そして、その中には、つながりとか全体性、そしてさらに、その中に生命というようなものを見出していく視点がシステム思考です。

そこで、システムクラスでは、個別・分化の状態から、ホリスティックに仕組みを組み直すというようなことを考えました。個々の学問・分野など、現在個別分化された限定的な社会システムをもう一度ホリスティックな視点で考え、組み直してみて、そういったことでアイデアや戦略をみんなで考えるというような場となりました。
大気や水や植物、動物など相互に作用を及ぼす生態系、エコシステムというものを僕たちはエコロジーと呼んでいますが、これは生態系だけではなくて、社会にもエコロジーがあります。思想にも、情報にもエコロジーが存在します。
システムクラスでは、現在の世界の複雑な状況下で、最も変化を与える構造というのを見極めて、様々な要因のつながりと相互作用を理解ためで、死の変化を作り出すアプローチというのを探るということを目的に行われました。
最後に、今回の事例として、今の経済システムをもう一度捉え直して、つながりという要素をポイントとして考えて、ブロックチェーン技術を使ったアプローチしている阿部亮一さんのピースコインや、一つの映画を観客(参加者)同士が感想などを共有したりして、つながることによって社会そのものをワールドシフトのきっかけにしていこうと考えた『純愛』という映画の紹介をしました。他には、今回のワールドシフトのイベントに協賛いただいたネクストウィズダムファンデーションさんの、次の時代に叡智というものを残して編纂するような活動など、そういった動きの事例をみんなで共有することで、最終的にみんなの行動を促し、つなげていくこと。そのあと、グループに分かれて、それぞれのワールドシフトのメッセージと自分のアクションをグループで共有しながら、つながりを作っていくということをやりました。





これは単なるイベントというものを超えて、ネットワーク、正にシステムとして一つのネットワークが有機的な生命体としてこの「動く」ことを意図したものであるので、この創造学校でのワークショップをきっかけにその後も様々な動きが始まっていきます。
おそらく2020年から2030年にかけて、世界はSDGs(持続可能な開発目標)17項目169の目標を定めた動きが活発になるわけですが、そこに向けたシフトのロードマップをどうやって作れるだろうかということが今後行われていくと思います。そして、この1年はこういった個々の活動がさらに積極的にオーガナイズされていく流れになると思われますし、それから、ようやくそのプラットフォームが出来る準備が整いつつあるので、ぜひ、今後のワールドシフトの動きに注目していただき、必要ならばこの動きに参加してみてはいかがでしょうか。




Systemクラスのグラフィックレコーディング




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