Vol.1 「だれか」から「わたし」へのシフト
【WorldShift Kyoto Forum 2018インタビュー】
ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン代表理事 谷崎テトラ
written by 並河進
シフトを起こす人たちが、
「まなび」「つながり」「うごく」場をつくりたい。
「WorldShift MAGAZINE」の「WorldShift」という言葉。まだ聞きなれない方も多いかもしれません。
WorldShiftとは、どんな考え方なのか?そして、どんな活動を広げているのか?
来年2月4日に開催されるWorldShift Kyoto Forum2018に向けて準備を進める、ワールドシフト・ネットワーク・ジャパン代表理事の谷崎テトラさんにお話をうかがいました。
WorldShift は、
持続可能で平和な未来へ向けて、
ひとりひとりが宣言するムーブメント。
—WorldShiftについて教えてください。
現在、世界は危機的な状況にあると言われています。
22世紀まで、いまの文明が維持できない理由は、100以上あるという研究結果もあります。また、生態系、経済、社会の3つの大きな危機的要因は、実は、複雑に結びついています。
2007年のリーマンショックを受けて、世界的なシンクタンク「ブタベストクラブ」の会長のアーヴィン・ラズロ博士が、 2009年に行われたロンドン会議で、「世界的緊急事態における、ワールドシフト2012宣言」を発信しました。それが「WorldShift」のはじまりです。
「World」という言葉と「Shift」という言葉を結びつけたこの1つの単語で、変わりつつある世界、そして、世界が変わらなければいけない、ということを表現したのです。
WorldShiftが扱うのは、1つのイシュー(課題)ではありません。
エネルギー、衣食住、メディア、教育・・・すべての分野でシフトが必要だとされています。また、WorldShiftを実現するのは、国連や国だけではありません。企業、個人、地域・・・。それぞれの人が、それぞれの仕事を通じて社会を変えていくことが必要です。
2009年、日本に来日したアーヴィン・ラズロ博士に出会ってから、このWorldShiftを、日本で広げていくことのお手伝いをはじめ、2010年には、ワールドシフト・ネットワーク・ジャパンを立ち上げました。
ワールドシフト・ネットワーク・ジャパンは、□→□というシートを掲げ、「自分でどんなことができるだろうか」を問いかけるNGOです。
ひとりひとりが、世界をどう変えたいか、自分自身で考え、そして宣言すること。そして、そのこの「→」の変化をどうつくるか、と考えることが、ソリューションにつながります。
企業にとっては、その「→」は、「ソーシャルビジネス」かもしれないし、NGOにとっては「アクション」かもしれない。個人にとっては、「生き方」かもしれない。
そうした「→」が、集まって、世界を変えていくはずです。
—今回のWorldShift MAGAZINEのテーマは、「だれか」から「わたし」へのシフト。このテーマについてはどう思いますか?
私たちの世界は、国や企業、政治家など、誰かがつくった世界でしかないと思っている人が多いかもしれません。でも、本来、世界というのは、自分たちでつくるものです。これが、WorldShiftで、もっとも重要なポイントのひとつです。
世界は、自分たちの力で、変えられるということ。
マーガレット・ミードは、「すべての世界の変化は、たったひとりの良識ある市民から始まる」と言っています。
国民の解放運動も、民主化の運動も、世界最大の環境運動であるアースデイも、思い返せば、たったひとりからはじまったものです。そのひとりを、フォローをする人がうまれて、そして大きなムーブメントとなり、世界は変わってきました。
また、世界の「つながるスピード」は加速しています。 テクノロジーによって、それぞれの人が、興味や思い、考えで、瞬時につながる時代になってきています。
たとえば、クラウドファンディングで、個人であっても資金を調達することができるようになりました。自分はこういう世界に変えていきたいんだ、と宣言すると、さまざまな角度でサポートする人が瞬時に現れる。10年前には考えられなかったようなテクノロジーの進化が、「だれか」から「わたし」へのシフトを後押ししていると思います。
—WorldShiftにおいて、重要な考え方はなんでしょうか?
ダーウィンは、生き残るのは強いものでも賢いものでもなく、変化できるものだ、と言っています。
われわれは、変化することで、危機的な状況を回避していくことができる。
いろんな人の考えをまとめていくと、地球の問題の多くは、実は既に解決方法が見つかっている、ということが多いのです。
でも、その方法がまだ知られていなかったり、これまでのしくみとの軋轢があり、実行されていなかったりします。
たとえば、地球全体でつくられている食べ物は、世界中のすべての人ひとりひとりが、1日3500kカロリー以上を手にすることができる量、すでにつくられています。にもかかわらず、いまも一年におよそ1200万人の子供たちが餓死し、 一方、日本では年間約630万トンの食品が廃棄されています。
必要なのは、優先順位を変えることです。
ワールドシフトの創立者のアーヴィン・ラズロ博士は、3つの考え方を示しています。
1つめは、 「20世紀が権利の世紀であったとしたら、21世紀は責任の世紀である。」ということ。
たとえば、政治についていえば、20世紀が、権利である投票で選んだ政治家に委ねる、いわば「おまかせ民主主義」だったのに対して、ITの技術などの進化によって「参加型民主主義」へと変わろうとしています。 エストニアでは、電子政府化が進み、選挙ではなく、合意形成によって政治を行なっていくしくみが実装されつつあります。自分が、どのような社会をのぞんでいるかを意識的に表明し、ひとりひとりが社会をかたちづくることに責任を持って関わるという時代です。
2つめは、「人類の未来は予測するのではなく、創造していくものである。」ということ。
2050年までのAIによる未来予測を、京都大学と日立が共同研究をしたところ、2万通りの未来予測が出てきました。僕たちの社会へのコミットのしかたによって、 2万通りもの多様な未来があって、 2万通りの中から、どの未来を選び取っていくのか?を、私たちは自分たちで決められるのです。
3つ目は、「その問題をもたらした意識や思考のままでは、 その問題を解決することができない」ということ。
これは、アインシュタインの言葉の引用でもあります。現象を見て、その現象を分析しても、その根本原因までに至らないと、課題は解決できません。自分のパラダイムやマインドセットを変えるためには、いままでと違った思考方法をどう取り入れるか、が大事なのです。
2018年2月にWorldShift Kyoto Forum2018を開催
—ワールドシフト・ネットワーク・ジャパンのこれからの活動について教えてください。
ワールドシフトネットワークジャパンは、3つの活動を行っています。
1つ目は、アーヴィン・ラズロの著書「WorldShift」翻訳と出版を行いました。デザイナー、翻訳家など、多くの方のプロボノ(スキルを活かしたボランティア)によって実現しました。
2つ目は、ウェブを使った発信です。
このWorldShift MAGAZINEをはじめ、メディアでの発信を続けています。
3つ目は、WorldShiftに関わる人が集まる場の開催です。
2010年〜2013年まで4年連続で、年一回、WorldShift Forumを国連大学で開催しました。
その後、 WorldShiftをより深く学んで発信したいという声があったため、「ワールドシフトコミュニケーター講座」というワークショップをスタート。3年間で約70名のワールドシフトコミュニケーターを養成し、各コミュニケーターは、それぞれの地域や企業でWorldShiftの活動を展開しています。
最後に開催したフォーラムから5年たって、すこしずつ広がりを見せてきたWorldShiftの運動を、一箇所にあつめて、さまざまな情報を共有できる場をふたたびつくれないか、 と考え、今回、京都造形芸術大学の春秋座という場をお借りして、 2018年2月4日(日)に「ワールドシフト京都フォーラム2018」を開催することになりました。
テーマは、「まなぶ、つながる、うごく」です。
アーヴィン・ラズロの最新メッセージが映像で届ける他、環境、経済、社会で起きている、予測できない未来へ適合するための最新パラダイムを「まなぶ」こと。
平和やコミュニティ、働き方・生き方など、世界中で起きているソーシャルムーブメントについて語り合い、考え、「つながる」こと。
そして、フォーラムに参加するみなさんが、「気づき」を身体化させ、WorldShiftを実際に起こしていく、つまり、「うごく」こと。
京都造形芸術大学教授・副学長でもあり、「教育学」を超える「学習学」の提唱者でもある本間正人さんと、コーチングのプロフェッショナルでもある大江亞紀香 さんをナビゲーターに、フォーラムに参加するすべての人が主役となって、課題を希望に変えていく、そんな時間をつくっていけたらと思っています。
「WorldShift Kyoto Forum 2018〜まなぶ、つながる、うごく〜」
参加のお申し込みは
(聞き手:並河進 / WorldShift MAGAZINE編集部 )
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